伝統工芸が密集するこの地区で各伝統工芸品をモチーフにしたクッキーを作りました。これには、店主のこんな思いがあります。コロナ以前、地場産業などのイベントでよく耳にしたことが、伝統工芸の密集地であるこの地域において、土産物としてのお菓子がないことだったらしく、ケーキ屋として何かできないかなとずっと考えていたそうです。最近、コロナ禍でも伝統工芸士さんたちがそれぞれの枠を超えて1つのイベントを開催しているのを知り、型抜きクッキーで伝統工芸を盛り上げられたらいいなと思い至ったそうです。
そして、完成したのが、名付けて「越の里の手仕事めぐり」。団扇に使われている越前和紙、花柄お椀の越前漆器、徳利とお猪口の越前焼、箪笥の越前箪笥、ナイフの越前打刃物、5種類です。また、これらのクッキーは、これまた1300年の歴史を持つ赤米入りです。赤米にはこんな歴史があります。
今から千三百年前、奈良時代に「くになかのケーキ屋さん」がある南中山地区でとれた赤米が、平城京に住む皇族・長屋王に送られていました。長屋王邸跡の発掘調査にあたり地中から荷札木簡(木片に書かれた荷物の送り状)が出土し、木簡の表に「丹生郡中津山里生部安倍赤米一石」、裏には「和銅八年」(715年)と書かれていました。和銅8(715)年に「赤米一石」を届けたことを示す荷札木簡だったのです。このことにより、地元越前市立南中山小学校の5年生らが平成16年から毎年、赤米を育て、収穫して越前和紙を通じた縁などもある薬師寺に奉納しています。
千年の歴史を感じることができるクッキーです。